野火 [DVD]
監督の市川混さんは、スタイリストとして評価されていますが、
こんな映画も撮っている。
敗戦につぐ敗戦、
日本軍は退却を余儀なくされる。
そこで、どんな現実が待ち受けていたか?
原作は宗教心を問うた部分があるのですが、
市川さん、そこはカット。
とにかく、人間が「生きる」という
ことのためなら何でもやる、という
非情な部分だけ残します。
それで正解でした。
すべてが見事にかみ合った映画です。
事件 (新潮文庫)
時は昭和36年、神奈川県の田舎町で19歳の真面目な青年が、付き合っていた女性の姉を刺殺してしまう。
逮捕された青年は犯行を認め、事件は一見単純なものに見えたが、裁判の過程でいくつもの新事実が明らかとなり、事件は複雑化し謎を深めていく。
証人達から巧みに新事実を引き出し被告人を有利に導いていくベテラン弁護士の鮮やかな手腕は圧巻であるが、
一方で事件の真実に到達する事の難しさと限界を痛感させられる。
そして人が人を裁く難しさについて色々と考えさせられる。
「真実は結局はわからない、というのは判断の停止を意味するから、裁判官は言ってはならない。しかし真実に対して謙遜な気持を失ってはならない。」という裁判長の言葉に、示唆を含んだ思慮深さを強く感じた。
ちなみに本書は日本推理作家協会賞を受賞しており、日本のミステリー史に残る傑作。
明日への遺言 特別版 [DVD]
戦争を美化するつもりはありませんが、
こんな素晴らしい将校が日本軍にはいたのですね!
「勝ったら何でもアリ、負けたら何でもダメ」という
戦後の日本を取り巻く状況に屈することなく、
最後まで筋と信念を通したこの岡田中将は、
まさに男の中の男ですね!
これはぜひ多くの人に見てもらいたい映画です!
諸井三郎:交響曲 第3番・交響的二楽章他
戦時中に作曲されたという交響曲3番はすばらしい傑作である。全3楽章構成で「静かなる序曲ー精神の誕生とその発展」「諧謔について」「死についての諸観念」というそれぞれの標題を見ただけでも、この曲がいかに並々ならぬ内容を持っているか、察しがつくというものだろう。たとえば「死についての諸観念」は戦争の影を宿すが、不思議な明るさが漂っている。これはなぜか?この不気味さは何事なのか?
録音はいいし、湯浅卓雄指揮アイルランド国立交響楽団の演奏も深い。諸井の他の交響曲も聴いてみたくなるできばえだ。解説文は日本語で充実の極み。