真田幸村(中国語) (日本時代小説経典)
イギリス人の霧隠才蔵、石川五右衛門の遺児にして女装の三好清海、琉球から来た筧十三、武田勝頼の子という身分を語ることなく真田幸村の股肱となる猿飛佐助などなど、その荒唐無稽なスケールのデカさと奇想天外な物語の組み立てで、もはや滝沢馬琴の里見八犬伝を超えたのではないかと思えるほどの柴田錬三郎の真田十勇士。幸村を諸葛孔明に例え、立川文庫の世界を存分に活かしながら(本作にては十勇士としてカウントされないはずの海野六郎らも、なぜかしっかり登場させていたりする)も、独自の真田十勇士世界を描く本作。幸村自身は「赤い影法師」にて大阪夏の陣以降の生存を描かれているほど、作者のお気に入りのようで、本作への力の入り方も尋常ではないように感じます。
斬る [DVD]
仲代達矢のファンなので観ましたが、正直監督のことまで考えていませんでした。
インタビューで仲代達矢は岡本監督を「そんなことやっていいの?」というようなことをやる監督だったと言っていました。
黒澤監督とはまた違った雰囲気があって、面白い作品でした。
神山繁の冷酷な悪党ぶりも良かったですし、高橋悦史のずれた一直線ぶりも名演技でした。
もちろん主役仲代達矢の肝心のところですっとぼけた演技が傑作です。
それだけに過去に負った傷が強調される演出が興味深かったです。
そのほかには、初代黄門様の東野英次郎のとぼけぶり。
岸田森の演技を観られて「傷だらけの天使」を観ていた私にはとっても嬉しかったです。
高橋悦史は、後に「鬼平犯科帳」で佐嶋の役で重厚な演技を見せてくれたのが、懐かしいです。若い頃はこういう役も演じていたんですね。
仲代達矢が「喜八ちゃん」と言うくらい気が合った理由が分かる、面白い作品でした。
一夢庵風流記 (集英社文庫)
強者に媚びず、己を曲げない。誰より強く、誰より優しく。
天下人にすら尻を食わせる痛快ぶり。
男ならば誰もが憧れる生き様。女なら誰もが惚れる男っぷり。
それが天下無双の傾き者、前田慶次郎利益。
読んでいると「こんな面白い男が居たんだよ。」と作者:隆慶一郎氏の語りかける声が聞こえるようだ。
「一夢庵風流記」は、漫画「花の慶次」の原作でもある。
原作があって、それがマンガやアニメや映画に展開されてゆく事はしばしばあるが、ほぼ9割の確率で台無しになっている。
そして原作から入ったファン・展開された作品から入ったファンそれぞれを失望させる。
だが、この作品は違う。原作から漫画に入っても、漫画から入って原作に入っても慶次は生き生きと駆け抜ける。
それは描き手の手腕もさる事ながら、読み解き手が誰であろうと有無を言わせない慶次そのものの魅力という物が大きいのではないかなと思う。
こんな気持ちのいい男が、歴史上確かにいたという事実。
人は、世界は、面白い。
NHK人形劇クロニクルシリーズVol.4 辻村ジュサブローの世界~新八犬伝~ [DVD]
辻村ジュサブローが人形を制作したNHK人形劇「新八犬伝」の第1話・第20話・第464話(最終回)、「真田十勇士」の第1話・第443話を収録。「新八犬伝」場合、物語の発端、八つの珠を追ってゝ大(ちゅだい)法師が旅立つ話、そして八犬士が勢揃いして新たに旅立っていく最終話のみとなります。
前者は滝沢馬琴「南総里見八犬伝」をアレンジし、里見家を守る八犬士の数奇な運命と活躍を、後者は滅亡間近い豊臣方に付き、義に殉じる真田幸村以下十勇士の活躍と死を描いた名作。本来ならば全話観ていただきたい作品なのですが、放送された時代のビデオテープは貴重で全ての保存はかなわず、現存している映像ははここに収録されている物のみ(劇場版「新八犬伝」を除く)、後は全て消失してしまいました。
約30年前全国の視聴者の心を熱くし、そして二度と帰ってこない旅に出てしまった勇者達の姿を、このDVDを見て思い浮かべ、そして是非とも語り継いでください! そうでなければ「玉梓が怨霊」も浮かばれません!
ロング・グッバイのあとで ―ザ・タイガースでピーと呼ばれた男―
解散時には小学生だった私ですが、タイガースの解散にはなにか大人の事情があるのだということは憶測するのに易しいことでした。トッポの脱退以来、思いは一つのはずだったのにみんなが違う方向を向き始めたこと。けれどそれは若い彼らには当たり前のことだったんだと思います。頂点にいた芸能人でありながら必死にもがいて自分を探していた若き虎たち。40年の時を経てまた同じ道にたどり着いたことも、一人ひとりが真摯に自分の道を歩いてきたからこそ価値が有るのでしょう。
タイガースのピーを思い出すことは、許されないことなのかと感じていた40年ですが、長い杞憂から解けさせてもらった一冊です。