散り行く花 (トールケース) [DVD]
最初の15分間は説明的で面白くないけど、リリアンが登場してからは目が釘付けです。鬼のような父親に苛められて、なおかつ「笑って見せろ」と言われ、手で口の端を上げて無理に笑顔を作ってみせる可愛らしさ哀れさは言葉で言いようもない。メロドラマが嫌いな私ですが、最後もとても涙なしには見られない。リリアンが妹のドロシーと競演した「嵐の孤児」もとてもいいのだけど、あれはDVDにはならないのですか?こんなに可愛い女優は、リリアン以外後にも先にもいません。
散り行く花 [VHS]
中国人青年チェンハンは、仏の教えを布教するべくロンドンに向かう。洋々たる前途に胸を躍らせる若者は、数年後貧困街で雑貨店を営み、失意の日々を送っていた。一方、少女ルーシーは義父の暴力に怯える毎日。ある日2人が出会ったことで、二人の胸にわずかな希望の光が差し始める。・・・
中国人を演じるためのメイクや、オーバーな怯え方など、ちょっと慣れない箇所もあったけれど、予想以上に面白い!中国の街からはじまって、ロンドンの貧困街、怪しげな阿片窟など、ちょっと霧のかかったような映像に引き込まれました。単なる白黒ではなく、場面ごとに青、セピア、紫と色が変わるのも素晴らしいのです。物語自体は単純だけど、「こんなはずではなかった」と苦悩する青年の挫折や、虐待に涙する子供など、現代にも通ずるものがあることに驚きました。
無声映画だから台詞は字幕(+弁士の語り)だけですが、それでも罵声や恐怖の叫び、殴る音が聞こえてきそうな虐待シーンの凄まじさ。二人で一時の安らぎを得る場面での中国のオルゴール。映像と俳優の演技だけで、台詞や音楽まで伝わってくるかのようでした。撮影当時、20代だったリリアン・ギッシュだけど、少女としか思えないほどいたいけで繊細で可憐です。滑稽なほどに目を吊り上げても美男子のリチャード・バーセルメスや、『シャイニング』ばりの恐ろしさで主人公を追い詰めるドナルド・クリスプなど、役者たちの演技もお見事です。哀しくも美しい絶品のメロドラマ、ぜひぜひ観てみて下さい。
散り行く花 [DVD]
恵まれない境遇、親からの不条理な暴力におびえながらも懸命に生きる可憐な少女を演じるリリアン・ギッシュが素晴らしい。自分の指で口を広げ、笑顔を作る姿は、彼女だけのものといっても過言ではないのでないでしょうか?散りゆく花のタイトルも詩的で美しい。
散り行く花 [DVD] FRT-144
ハリウッド映画で東洋人の男が白人の女性と恋に陥るという設定は、ほとんど無い。が、白人の男が東洋人の女性と恋をするというのはよくある。黄色人種が白人の女性を恋人にすることなど許せねぇ、と白人男性の観客は思うのだろう。だが、俺らが東洋人の女性をモノにするのは良いと思っているんだろう。人種差別と性差別、二重の差別をしているのだ。差別していても黒人観客を意識しているハリウッド映画はあまり東洋人は視野に入ってこないらしい。
だが、この映画は珍しく中国人男性が白人女性に恋心を抱くというのはハリウッド映画としては異色の視点を入れている。グリフィス監督の「国民の創世」は映画史上に輝く名作とされるのに、黒人差別が露骨に出ているためにアメリカでは公の場での上映が禁止されている、と何かの雑誌で読んだことがある。その黒人差別を映画で描いてしまったグリフィス監督は何故本作では東洋人の男が白人女性に恋をするという物語を取り上げたのだろう。
普通に考えたら、黄色い男が白人女性との恋はもってのほかではなかったか。もっともこの中国人の男は白人女性を抱いてキスすることはないけれど、異種人種の恋はここらが限界だったのだろう。
映画を観ても得に東洋人差別をしているとは思えなくても、逆に東洋人に親しみをこめているとも思えない。東洋人の設定なのに、白人の男が演じているし、東洋人の目なら細いという固定観念のあるメーキャップなのだった。
あくまでも物語として取り上げただけで、人種がどうのこうの、ではなかったのかも知れない。でも、映画の初期でこの異種人種の恋を描いたという点は注目すべきことなのかも知れない。