伴晋作&BLACK CATS - エデンの東へ〜47才〜東への道

TOGISM 2001

篳篥（ひちりき）の澄み切った、もの悲しい音色がとても美しい。初めて聞く楽器なのに、なぜかなつかしい響きがする。だが残念な事に、曲がどれもこれも似たり寄ったりで、しかもどうって事のない曲ばかり。いくら聞き流すだけの癒やし系の曲でも、もう少し面白味がほしいと思う。 TOGISM 2001 関連情報

東への道【淀川長治解説映像付き】 [DVD]

この映画も学生の時分にアテネフランセ文化センターで観たが、リリアン・ギッシュを初めて見た作品がこれである。存在自体がハリウッド映画史となる彼女の若かりし頃の映画で、華奢な彼女が不幸な運命に翻弄されながらも救われる展開が如何にもハリウッド的で猛吹雪によるドラマチックな場面も含めて大河ドラマのような趣がある。或る男と出逢ったが為に奈落の底に突き落とされ、流転の人生を送る事になったアンナは終盤で遂に反撃に出る。それは彼女が辿り着いた農家のバートランド家に自分を不幸に追い遣った男が農場主の知人という関係で現れたのだ。その男レノックス・サンダーソンがアンナを騙して結婚した張本人であり気紛れのように彼女を捨てる。身籠った彼女は人知れず出産するが生まれた子は病死。彼女は世間の荒波に飲み込まれるように苦難の道を歩む。自暴自棄となって命を絶っても不思議ではない環境の中、アンナが自分を見失うことが無かったのは、この理不尽な仕打ちにより齎された苦境から脱する決意が耐え忍ぶ力となって彼女を支えたのではないか。農場主もアンナの素性が解ると一転して追い出そうとする。この窮鼠猫を噛む状況が避けられない運命のように彼女を待ち構えていた。だがアンナは既に逃げる事なく立ち向かう勇気が出来上がっており、それが試される時が来たのだ。毅然として対峙した彼女は理路整然とサンダーソンを問い詰める。その姿は逞しくも美しく同情や憐みを誘う素振りは一切見せず正義を貫く姿は意志の強さを感じる。皮肉にもサンダーソンが齎した数多の苦難はアンナを芯の強い女性に変貌させた。未婚の母という反道徳的に見られる女性の立場で彼女は敢えて信念を持ってその真意を説く。その勇気は現状だけで彼女を判断し人間性を否定しようとした農場主の姿勢も追及する事に繋がった。そんな女性に対する偏見は今日まで何ら変わっていない。ハリウッド的メロドラマでありながら最終的に浮かび上がってくるのは女性への尊厳。【雑感】この映画はサイレント作品であるが現在見られるハリウッド映画の大半の要素を満たしている。そんなサイレント映画を観るに付け常々思うのが現在の映画が殆ど進歩しておらずサイレント映画のバリエーションに過ぎないという事。技術的には驚異的な進歩を遂げてはいるが根本的な部分ではサイレント映画の方が勝っている場合が往々にしてある。刺激の強い映画に慣れてしまうと受動的になって何故か感性が鈍るような気がする。昔の映画人の方が感受性が豊かだったのではないか。ふとそんな思いに囚われた。東への道【淀川長治解説映像付き】 [DVD] 関連情報

清水保雄作品集

アイヌ、沖縄、シルクロード（大和〜中央アジア）をモチーフに、土俗的な旋律をふんだんに盛り込んで綴られたマンドリンオーケストラ作品。ロマンチックかつドラマチックで、旅情を掻き立てる音楽だ。伊福部の世界にも隣接しているが、昭和歌謡曲草創期の作曲家だけに、日本人の心の奥に届くエモーションというか哀愁に溢れ、娯楽性に富んだ楽曲構成が、時空の旅の最終目的地まで飽きさせることなく連れて行ってくれる。日本人南方起源説を唱えた晩年の柳田國男翁の著作をめくりながら、遥かな日本民族の旅に思いを馳せつつ、聴いています。清水保雄作品集関連情報

東への道 [DVD]

片田舎で母と暮らしていたヒロインの「アンナ」。世間知らずの純真無垢な少女で、リリアン・ギッシュの喜怒哀楽に満ちた演技が光る。東部に住む親戚を頼り、職探しに都会へと繰り出すアンナ。華やかな社交界でのうっとりするような体験、そしてアンナな純真な心に付け入る悪漢「サンダース」！ロウエル・シャーマン演じる女好き、博打好き、遊び好きのどうしようもないプレイボーイ。「君を幸せにするよ」と平気で嘘をつく。アンナはサンダースに騙され人生に暗い影を落とす。心に傷を負ったアンナは地方をさまよい、遠方の農家バートレット家の女中となる。やがてバートレット家の息子「デイヴィッド」の優しさに惹かれていく。「散り行く花」での気の優しい細面が、今作ではたくましく思いやりのある好青年を演じる。そんなデイヴィッドと互いに惹かれていくアンナだが、自分の過去を引きずり「私は幸せになることを許された人間なの？」と葛藤する。アンナは外に降りしきる雪のように、自分の心を「氷の壁」で覆いそうになる。だがデイヴィッドは彼女の過去を問わない。ただただ優しく受け止め、彼女の「氷の壁」を徐々に溶かしていく・・・。そして愉快なバートレット家との交流。リリアン・ギッシュと表裏一体の存在とも言える裏ヒロインことメイ・マーシュも面白い役どころ。そこに再び現れるサンダース！バートレット家にちょくちょく出入りするような抜け目無い野郎だ。アンナの過去を暴き、デイヴィッドとアンナを引き離そうとする。だがデイヴィッドには、そんな彼女を受け入れてやろうという「覚悟」と「決意」に満ちていた。デイヴィッドのアンナに対する想いは本気だったからだ。サンダースと取っ組み合い、殴り飛ばして猛吹雪の中に絶望に暮れ消えていったアンナを必死に探しに行く。アンナが力尽きた先は凍りついた河！それはアンナの心そのものだった。本当に氷の上での命懸けの撮影。砕けていく氷河、滝壺へと流されるアンナ。懸命に氷河を走るデイヴィッド！間一髪の救出劇！氷のように冷たくなったアンナの心と体を、再び暖かい心で迎え入れるデイヴィッド。そして辛い過去を乗り越えてきたアンナを優しく迎えるバートレット家。もうアンナの心が凍ることは無いであろう。最後の最後に迎える三重の「結婚式」も見事。結局ほとんどサンダースにおとがめはないし、ちょっと強引な部分もあるが、「散り行く花」を見た後にこれほどの幸福が登場人物たちに訪れる・・・グリフィスの愛情が溢れ出ているのだ。良い映画じゃないか。東への道 [DVD] 関連情報

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