時をかける少女
第1に、「時かけ」の本質を生かしたまま、質の高いドラマに仕上がっています。
「時かけ」を脚色したドラマや映画は数多くありますが、この完成度はNHK少年ドラマシリーズ「タイムトラベラー」以来です。
(NHKでの放送当時、小学5年生でしたから明確に記憶してます)
第2にスタッフ、キャストが豪華。
演出は、「パラサイトイブ」「催眠」「感染」の監督、落合正幸、「僕の生きる道」「ウォーターボーイズ(TV)」の佐藤祐市。
脚本は「踊る大走査線」でブレイク直前の君塚良一。ドラマの質が高いのは納得でしょ。
音楽は宮崎、北野両監督御用達の久石譲。ちゃんと久石節が聞けます。
キャストは和子=内田有紀、深町君=袴田吉彦、吾朗ちゃん=河相我聞。
加えて、和子の妹=安室奈美恵、和子の親友同級生=鈴木蘭々、和子のバスケ部のチームメイト=菅野美穂。
他に、森本レオ(和子父)、吉沢京子(和子母)、佐藤B作(福島先生)、森口瑤子(英語教師)、塚本信夫(深町父、MAT初代隊長)、原作者の筒井康隆まで住職役で登場。
これはフジ土8の「僕たちのドラマシリーズ」の最終作、このビデオは全5回を120分に編集した総集編ですが、このドラマの良さは堪能できます。
(福島先生と奥さんのドラマや他の丁寧な描写が味わえる、全長版のDVD発売が待たれますが・・・)
「時をかける少女」ファンと特に「NHK少年ドラマシリーズ」ファンにお勧めします。
時をかける少女 [DVD]
もう何年も前に筒井康隆さんの原作を読んだことがありますが,
当時はSFとして楽しんでいました。
でもその印象とは別にこの物語は,原田知世演ずる一人の少女の
恋の物語というニュアンスが強く,そう言う意味で原作を生かし
ながらもまったく違った映画であるといえるのかもしれません。
原田知世が歌うエンディングは,一遍のミュージッククリップ
としても素晴らしくDVDで何回再生をしたことでしょう。
時をかける少女 通常版 [DVD]
一度観れば十分な作品。
劇的な青春を描いたんだろうが、主人公の悪ふざけ、ドンちゃん騒ぎをひたすら見せられる。
取り巻きのイケメンや親友のためには何度もリープ。
その他の巻き込まれた人の不幸には見もくれない。
「なんでこんなことに・・」って顔するなら根本的にやり直してしてやれよ。
最終的にチャラだから・・・ってそういう問題じゃない。
主人公の破天荒ぶりはアニメならではなんだろうが、身勝手さは現実的すぎてイラッとする。
そもそも未来人。
現代人と付き合っていいのかよ?いいわけないなら告白るなよ。
クルミなくす前にリープしてチャージしろ。
観てる自分よりも、主人公がドキドキワクワクラブラブサメザメするためにあるストーリーだったなあと思った。
でも最後の歌がよかったので星三つ。
俗物図鑑 [VHS]
10代の半ばから20代に掛けて、筒井康隆は、自分にとって、ある種の神の如き存在だった。新潮、角川、講談社、文春、中公などの文庫本は恐らく総て読んでいたと思う。もちろん、私のような熱狂的なツツイストは数多く居たと思うし、それは今も変わらないと思う。
ただ、その映画化と言うと、驚くほどに少ない。ジュブナイル系SFの「時をかける少女」が胸きゅんアイドル映画として傑作になった以外では、「ウィークエンド・シャッフル」、「ジャズ大名」、「大いなる助走」、「スタア」、「日本以外全部沈没」、今年公開の「七瀬ふたたび」に、今作ぐらいじゃなかったか。
それは、猛毒で観念的、シュールリアリズム溢れる筒井文学が、当時も今も映像化に向かないと考えられていたからだと思う。確かに、「虚人たち」や「虚航船団」以降の諸作は極めて実験的であり、映像化不可と言うか文学でしか成立し得ない題材なのではあるが、80年代初めまでの作品群は、実はその強固な物語性から映像化しやすい要素が多かった。にも拘らず、何故、映画化されたものが少ないのかと言えば、それはやはり、その語り口や心理描写の絶妙さに、何より小説がオモシロすぎて、どうやってもそれ以上は面白く表現出来ないと映画人たちが怖気づいてしまったからだと推測する。
さて、前置きが長くなってしまったが、今作は、そんな中で、筒井文学の映像化に果敢にチャレンジし、その小説世界を顕現化した痛快作。監督の内藤誠が、脚本家桂千穂と構想を練り、製作費500万円で撮り上げた。
有名小説ゆえ内容は割愛する。あらゆる反社会的、もしくは変態的な嗜好の持ち主がそれぞれの分野の評論家として、「水滸伝」の如く梁山泊プロダクションを結成し、世論や社会、国家権力と対峙する。
公序良俗や社会倫理を盾に世論を操作するマスメディアの欺瞞性への痛烈な批判にもなっている今作、演ずるのは、平岡正明、南伸坊、上杉清文、四方田犬彦、大林宣彦、手塚真、山本晋也、巻上公一、竹中労、渡辺和博、牧口元美、末井昭ら当時のカウンター・カルチャー系文化人たちが結集。山城新伍、入江若葉、朝比奈順子、安岡力也らの職業俳優らとコラボする。
映画、演劇、出版、音楽の分野で活躍する超個性的なクセモノたちが集うメタ・ムービーみたいな着想だが、唯一テレビ・メディアだけは、劇中徹底的にコケにされる事もあり、誰もキャスティングされていない。
正直、素人芝居っぽい処も多いし、やっぱりチープさはいかんともし難いのだが、忘れられない印象的なシーン多し。
梁山泊プロダクションが怪しげな自称評論家たちをオーディションするシーンで、実際の映画評論家である石上三登志が登場、自身はアメリカ映画評論家として、コーマン、コッポラ、ルーカス、ペキンパー他、アメリカ映画で分からぬ事はない、とセルフ・パロディで自己PRするも、審査員のひとりである横領評論家の上杉清文から、「それでは、あなたは北の湖に勝てますか?」と間髪入れず質問され、答えに窮し、不合格となるシーンや、山城新伍が、反吐評論家として、権威の衣を着た文芸評論家の四方田犬彦をやり込めるまでの独演的滑舌で捲し立てるシーン。
中でも、プータローの手塚真に、女性TVレポーター吉沢由紀が街頭インタビューするシーンはマスコミの本質を突いていて、白眉の可笑しさ。今観ても、大爆笑する事請け合いなのだ。
初見したのは、83年公開時。山下洋輔Trioによるジャズ演奏と連動した上映会。上映前に内藤が語った主役の雷門豪介役には、平岡以外にも、吉本隆明も候補に挙がって、またそのキャスティングでも観てみたいと思ったのが懐かしい。
公開時は、げらげら笑いながらも、熱い連帯を感じさせた今作。当然好き嫌いは分かれるが、カルト的怪作として、御覧頂ければと思う。
旅のラゴス (新潮文庫)
「人生そのものが旅である」と書かれた文章に触れたりする事がある。
非常に漠然と抽象的なコピーだからいまいちイメージがつきにくい。
まだ年端も行かない子供に、若者に、そしてある程度人生を送ってきた年配者に、
具体的に人生とはどういったものかというヒントを与えてくれる1冊
と言っても良いのが本作である。
この作品を読了した最初の感想は「この作品が日本人作家によって
日本語で書かれたこと自体が奇跡である。」というものであった。
本作の性質から言って筒井の数多ある作品の中でも異彩を放っている点
については異論を挟まないであろう。
本作はSFファンタジーの世界を舞台にしているが
ようは一人の男の青年時代から老年時代までの時間を
それぞれ印象に残るエピソードを交えながら
淡々と冷静に書き連ねていく人生物語である。
頻繁ではないかもしれない。
しかし年に一度は手にとって読みたくなるような1冊。
「傑作」と言う意味を知りたければ本作を読めば分かるであろう。