陰謀の天皇金貨(ヒロヒト・コイン)
本書は、犯人が特定されないまま捜査打ち切りになった、「昭和天皇御在位60周年記念100,000円金貨」大偽造事件の真相を暴いたノンフィクション小説である。
昭和61年11月10日に発行された、「昭和天皇御在位60周年記念100,000円金貨」。コインコレクターでなくても、保有している方は多いであろう。我が国初の記念金貨で、当時週刊誌などが発売直後にプレミアムが付き、数年後には数倍になるなどと騒ぎ立てたことから国民の関心も高まり、抽選で頒布することとなったため「引き換え抽選券」が発行されたことを覚えておられる方もおられると思う。
金貨の図案は、表面が「鳩と水」、裏面は「菊の紋章」と「日本国・御在位六十年」「拾万円・昭和六十一年」の文字が刻まれている。直径30mmで量目20g、金品位は1000の純金で、発行枚数は1,000万枚。一枚一枚プラスティックケースで封印(プリスターパック入り)されて発行された。
ところで当時の金地金価格だが、1g当たり2,000円程度であった。この十万円金貨の量目は20gなので、原価約40,000円程度ということになる。ここから先は素人でも思いつく事だが、偽造金貨の心配だ。これを防ぐため、造幣局も色々工夫を凝らしていたようだが、果たして大偽造事件が起こった。「日本貨幣収集事典(原点社刊)」によると、「平成2年(1990)1月29日、東京千代田区の富士銀行に天皇10万円金貨1,000枚の預金があった。国内最大手の貨幣商が初めてスイスから輸入し、預けたものであったが、女子行員が検査中、パックの色が異なる一枚を発見、それが警視庁三課の知るところとなった。金貨の鑑定は警視庁の科学捜査研究所が行い、表面のキズ、光沢のなさ、カプセルの違いなどから「1,000枚すべて偽造」の結論を出した。だが、それは氷山の一角であった。やがて分かったその数は10万7,946枚、しかもその大半、8万5,647枚が日銀に入っていたのである。それというのも、この被疑貨は2年も前から輸入されていながら不審を持たれていなかった。外国の金貨購入者が「利食い」の売りを出しているという噂が、大きな為替差益の発生(金貨の発行時には1ドル160円、事件当時には125円)によって当然のことと思われていたからであった」との事。
ではこの事件の結末はどのようになったのであろうか。偽造グループの特定も出来ず、捜査も打ち切られたのである。何ともスッキリしないこの事件だが、この事件の真実を暴こうと取材を続け、書き上げられたのが本書なのだ。主人公は被疑者である一人のコイン商。彼は、国内最大手の貨幣商がスイスから輸入する以前から合法的に「天皇金貨」を輸入していた。すでに日銀に入っていたうちの一部は、彼が持ち込んだものである。このため彼は大偽造団の一味として警察から厳しい取り調べを受けるのだが、彼にとっては身に覚えのない事。ダラダラとした取り調べが続き、苦痛の時を過ごすが、結局白黒つかず、うやむやに。しかしこの事件の裏には、アラブ、中南米、アメリカの絡む、政治的な動きがあったのである。
本書を読んだとき、私が「昭和天皇御在位60周年記念100,000円金貨」に抱いていた疑問、例えば、
'・何故60周年記念金貨の発行が昭和61年になったのか。
'・何故発行枚数の約一割(90万枚)が売れ残ったにもかかわらず、翌年(昭和63年)にも同じ金貨百万枚を発行したのか。
'・何故大量の金貨が外国から持ち込まれることになったのか
なども氷解した。
国家権力、国際政治上の駆け引き、政治家や官僚の保身術など、この事件から知ることは多い。天皇金貨偽造事件の真相は闇の中だが、私は著者の解き明かした内容を信じたい。
なお登場人物の名前は、政治家以外仮名を使っているが、コインコレクターであればそれが誰であるのか分かるので、人物を思い浮かべながら読むことが出来るであろう。貨幣コレクターは当然、そうでない人にもお勧めの一冊である。
貧困国への援助再考―ニカラグア草の根援助からの教訓 (アジアを見る眼 111)
単なる手順書のようにも見えるが、その手順を通じて見えるものは大きい。著者のニカラグアでの勤務内容を紹介しながら、一般的には行くことのできないような土地の紹介も楽しいが、この本の舞台で有るニカラグアを通じて途上国の抱える問題と、その大きな課題を著者なりに分析している。さらに大使館の職員の苦労話や実際の仕事も楽しく読める。中南米の研究や、国際協力の世界に興味の有る人には必見の書で有る。
ポンパラス
ローザの歴史をコンパクトに1枚にまとめたものとしては、このCDはとても優れています。
インディーズ時代から解散ライブまで、主要曲はだいたい網羅されているので、この1枚を聞けばローザがどのようなバンドだったのか大体分かると思います。
ほぼ年代順に配置された曲順になっていますが、1曲目に「SALT」を配置したのは失敗かも知れません。
インディーズ時代の貴重なトラックだけど、ローザの代表曲とは言えないんですよね。
淡々とした曲調で約9分間も演奏されるので、ついついスキップしてしまいます。
友人にローザの良さを分かってもらおうと思ってこのCDを貸しても、だいたいこの1曲目で挫折するようです。
この点を除けば、とても良い内容のCDだと思います。