日本でいちばん幸せな県民(ケンミン)
最近、日本でも幸福度をめぐる議論が活発になってきた。東日本大震災以降、特にその傾向が強いようである。内閣府でも幸福度研究会が組織され、最近(2011年8月29日)、報告書(案)をまとめたばかりである。本書は、法政大学大学院静岡サテライトキャンパスの「地域経済学」を学ぶチームが、都道府県別の様々な指標を組合せ、都道府県別「幸福度」をランキングしたものである。本書は、幸福度はもちろん、それを構成する都道府県別指標を観察することで、日本各地の特徴を考えるデータベースの宝庫となっている。
本書では、国民生活の様々な局面をカバーする指標40個を、「生活・家族部門」(合計特殊出生率など9指標)、「労働・企業部門」(離職率など10指標)、「安全・安心部門」(10万人当たり刑法犯認知件数など12指標)、および「医療・健康部門」(1人当たり医療費など9指標)に分類している。これら指標を第1位から第47位までランキングし、さらにそのランキングを10段階にグルーピングして、上位から10点・9点・・・1点とスコアリングし、40の指標すべての指標を平均して都道府県別のランキングをしている。指標別のページの他、都道府県別に指標がまとめられたページもあり、非常に読みやすい。恐らく、チーム内で様々な議論があったと思われるが、「幸福度」というあいまいな概念を、日本の実情に即して具体化している点で貴重な内容である。
もちろん、「幸福度」を本書のような外形的な指標だけで評価することには問題もある。各都道府県の住民をサンプリング調査して「実感としての幸福度」を明らかにし、本書の「幸福度」との関係を分析することも将来の課題として期待したい。
本書は、ランキングに一喜一憂するよりも、元の指標を参照することで、「住みやすい地域」とはどんな地域であるかを浮かび上がらせ、具体的な施策目標にもつなげるような使い方が建設的なのではないだろうか。東日本大震災からの復旧・復興にあたっても、様々な立場の人が本書を参考に、地域活性化の議論や施策立案・実施の過程に参加することが望まれる。