狡猾の人
本書はいわゆる防衛省汚職(山田洋行)事件を、「狡猾の人」守屋武昌(元防衛事務次官、懲役2年6箇月の実刑判決を受け上告中)の半生(その家庭崩壊の実態を含む)を縦糸に、防衛装備品の調達をめぐる政治的・外交的暗闘の内幕を横糸として描いたノンフィクションである。一読確かに掘り下げ不足の点もあるとは感じたが、個人的には事件の全体像(及びその暗部)について今までこれだけまとまった文献を読んだことがなかったので、裨益するところは大であった。特に、沖縄基地問題の内実や日米間で暗躍する米国人ロビイストの生態に関する記載、商社が得る手数料ビジネスのからくり(59〜62頁)、「八岐大蛇」と称される複雑な防衛省の組織実態(88〜92頁)、北朝鮮や中国によるハニー・トラップの一断面(180〜181頁)など、切り口の豊富さはやはり特筆すべきであり、著者の筆力もあって一気に読み終えた。
それにしても、こういう人物がトップに上り詰める組織とは一体どういう組織なのか。一事は万事。このことだけをもってしても、今日のわが国の官僚制がもはや壊れてしまっていることが今更ながらよく分かる。
「政界では、危機感を抱いた政治家が、一見突拍子もない行動をとるケースが少なくない」(191頁、久間章生(防衛大臣)及び中西啓介(防衛庁長官)の辞任に関する一文)。
著者には、本書(及びその関連)のテーマで第二弾・第三弾を大いに期待したい。
「普天間」交渉秘録
小泉政権当時、
普天間問題の実務者である著者の日記をもとにした
手記である。
本書を通して当時総理大臣首席秘書官であった「飯島勲」の名が何度も何度も
でてくる。
あまりにでてくるので数えてみたら35回!
特に著者が危機に陥ると頻繁に登場する。
普天間の政権内の交渉が乗り上げたとき、そして小池百合子問題があがったときは、頻発している。
交渉妥結も
日本が一枚岩になったことで米国との交渉が進んだのだろう。
四分五裂し、なにも前に進まない民主党の政治家は必読だ。
しかし、著者は、本当のことを
まだまだ隠しているような気がする。続編にも期待したい。
飯島勲の新刊に、普天間問題が詳述されていた。
二人の当事者が、それぞれ同じことを違う角度から論じているのを読み比べたら、ひじょうに面白かった。
小泉元総理秘書官が明かす 人生「裏ワザ」手帖