オールラウンダー廻(8) (イブニングKC)
今巻ではなく作品評ですが…
この作者さん、前作「EDEN」ではかなり本格的な“SF”作品を描かれていたのですが、画力・表現力も有り、設定もかなり凝っている…でも何故かイマイチ好きにはなれませんでした。
何故かと言えば、私なりの理由ですが、残念ながらキャラクターに魅力が無かったし、そこそこ主要なキャラも結構簡単に殺されたり…
と言う事で思い入れる事がないまま作品も完結してしまいました。
で、今作品は舞台と主題は全く変わって、現代の総合格闘技の世界…
最初はどうなる事かと思いましたが、今作品は前作に比べるとかなり良いですね。
ストーリーも悪くないし、何よりも一人々のキャラクターに人間味が有り魅力が有る。
表現力は元々高い作家さん、全てが噛み合ってる感が有ります。
前作の「EDEN」は“SF”という事で設定に力を注ぎすぎたのか…
勿論今作でもしっかりと取材をして勉強された事は読んでいて分かるのですが、
これ位力を抜いて(良い意味で)、ストーリーとドラマに注力した方がこの作者さんには合っているんではないでしょうか。
(もうチョッと感情と熱さを表に出しても良いタイプの作品だと思いますが…主人公がそういうタイプではないので仕方無いのかな)
「リアルさ」と言う意味でも他の格闘技系の作品と比べてもクオリティーは断トツ高いし、もう少し評価されても良い作品なんじゃないでしょうか。
何にしろ次巻以降も楽しみにしております。
オールラウンダー廻(1) (イブニングKC)
5巻まで読んだ上でのレビューです。
いい感じです。
サイバーパンクコミックである『EDEN』の次が格闘漫画とは、
かなり虚をつかれましたが、
根底にある世界観は、『EDEN』と同じようです。
作者は「自分がこの世界の中でいったい何者であるのか?」
というテーマにあくまでも固執されているようです。
面白いのは、『EDEN』はサイバーパンク的な舞台設定がされており、
話は地球上のあちこちを飛び回るのですが、どこか脳内世界への
沈殿と淀みに満ちたお話でしたが、本作での、主人公達の活動場所は
どこかというと、ジムと自宅と学校と競技場というコンクリの箱の中に限られており、
スポーツなのに、否、スポーツだからこその閉塞的環境に
人々は閉じ込められているのです。いわば都市的な内向性が
そこにあるのです。そこには人工的に作られた楽園の臭いがします。
そして都会的な総合格闘というスポーツの仮面の下に武闘という純粋な
暴力が隠されていることがすでにお話の中で示されております。
非常に作者好みの舞台設定が完成しつつあります。
さあ、この舞台を足がかりにどのような事件が持ち上がるのか?
この作品も『EDEN』のようにかなり長期連載されるものと
思っているのですが、この先の展開が楽しみです。
オールラウンダー廻(3) (イブニングKC)
この巻の主人公といえるのは廻のライバル喬でしょう。
ヤクザである叔父の関係からか、夜のお店で働くタカシ。
関わりも持った先輩のためにリスクの高い救出へと向かうタカシ。
1,2巻と比べるとファンタジー度高めですが、決してホラ話ではありません。
空手家であった祖父から伝授されたと思しき古流空手の技術を現行の総合で使うタカシ。
どのような経緯で古式を利用したアッパーを使うのか、何故総合格闘技を志向したのか今後そこら辺が語られていくと思うので、どんな過去があったのか大変興味深いです。
主人公・廻のジム仲間勇大にも何か過去の事件があったような伏線が張られているので、どんな内容がどう語られるのか楽しみです。
技術解説の描写の、丁寧さは相変わらずです。
分かりやすくて大変いいです。