鳩の翼 [DVD]
ヘンリー・ジェイムズのお国柄なので、紅茶に例えてみよう。
紅茶の中に混ざり込んでしまったミルクを再び紅茶とミルクに戻すことはできない。
再びそれらを分けようとするヒロインとその恋人、その行為は不毛なままに終わる。
若く美しい財産相続人ミリーは不治の病に冒されていて、余命幾許もない。
そんなミリーに自らの恋人マートンを差し向けるヒロイン、ケイトだが、やがて激しい嫉妬と葛藤に襲われる。
それを知らないかのようにマートンの心の中に混ざり込んでいくミリー、二人の女性の狭間で抜き差しならない思いに翻弄されるマートン、
ミリーの死後、マートンはケイトの画策に気付き、ケイトはマートンの心からミリーが消えないことに気付く。
全てが解決するはずだったミリーの死、それは遺された恋の終焉の墓標となってしまうのである。
英国上流社会の閉塞を背景に始まる三人の男女の恋の物語、その舞台はやがてベニスへと移る。
命の残り火を燃やし「ハメを外そう」とするミリー、水の都の抒情が彼女の死を前にゴンドラのように切なく揺らめく。
ベニスの持つさまざまな表情とともに繰り広げられる物語は、三人三様の思惑や駆け引き、打算を描き込み、混沌として激しくも儚い。
三角関係という在りがちな題材にもかかわらず、高い完成度を以って三人の内面を描いたヘンリー・ジェイムズの筆力、
まさに身を焦がすような昏い情熱でヒロイン、ケイトを演じたH・B・カーター、
「旅情」「眺めのいい部屋」に描かれた恋の街、「エヴァの匂い」「ベニスに死す」に描かれた「官能」と「死」の街
そのベニスを彩る光と影を描き出すカメラ、終盤ミリーの死を告げる喪服に序々にピントが送られるシーンも秀逸だ。
観客を深い余韻に惹き込む、美しく、語りの力に満ちた「珠玉」と呼ぶにふさわしい名作である。
Dove Comincia Il Sole
前作はカバーアルバムだったのでこれはASCOLTA以来のオリジナル作になります。
ASCOLTAは近年のアルバムでは突出した大傑作だったのと、ドラムのステファーノが脱退してしまったためにこのアルバムに対してはちょっと不安もありました。
しかしながら、その不安も完全に払拭されるどころか期待以上のアルバムを出してくれました。
正直舐めてました、すみません!
まあ、POOHですから良いに決まってるんですよ。
いきなりの重厚壮大な曲から持ってくるなんてこりゃ反則です(笑)
ドディのギターは歳を重ねるほど上手くなってます。
レッドのフレットレス大好きです。
そしてロビー。この人は私は今世紀を代表する大作曲家だと思っております。もっと世界的に評価されて欲しい。
とまあ、褒めちぎりましたがほんとPOOHのアルバムはどれをとっても傑作ですので、このアルバムで興味を持たれた方がいらっしゃったら迷わずに他のも聴いて下さい。まずはASCOLTAから。そして、70年代の数々の名作。感動されること請け合いです。
成恵の世界 (6) [DVD]
成恵とその仲間たちの手作りによる、春名(ハルナ)と島田オーナーとの結婚式を取り上げた第11話を含め、アバロン人の襲来でドキッとさせられた第1話を除けば、笑いあり感動ありで文句なしに楽しめました。それが、第12話(最終話)ではアバロン人の再襲来でやや殺伐とした雰囲気になり、見ていて落ち着けませんでした。 また、第12話では「モノ」としての「機族」が強調され、ちょっとかわいそうに思えました。終盤、アバロン人からの攻撃や、ウイルスに冒された天堂 蘭の暴走で同士討ちを余儀なくされ、致命的なダメージを受けた監察庁の機族たちを気遣う和人に、修復可能であることを匂わせるテイルメッサーの発言があったのはせめてもの救いでしょうか。
第12話では「成恵と関わることで、この先どのようなハプニングに見舞われようとも、和人の成恵に対する想いが揺るぐことはない」ということを強調したかったのでしょうが、私個人としては、それまでの雰囲気を壊すことなく「着陸」して欲しかったです。ということで、少々手厳しいかもしれませんが、これが私の評価です。ただ、第1話とのつながりが見て取れるので、こういうまとめ方もありかな、とは思います。