あの世 この世 (新潮文庫)
この本を読んだきっかけは、最新(2011/11 or 12)の「プレジデント誌」(7-11の店頭の手の届かないディスプレイ棚)に、「幸運を如何につかむか(?)」に関するテーマに何人かの著名人が文章を書いているらしいのを誌のカバーから知って、その中に瀬戸内寂聴さんがいらっしゃるので、私には、意外に思ったことでした。本屋で「プレジデント誌」を探したら、売り切れでしたので、寂聴さんのこの本を買った次第です、従って、この本をamazon.co.jp経由では購入していません。また、88歳になられた寂聴さんが最近NHKTVで今回の震災で大変な経験をされた皆さんへ慰めの言葉をかけられていたのを観たのもきっかけでした。
さて、本の内容の本筋は、既に八人のレビューがありますので、私が言及する必要はないでしょう。数時間で読み切れるほどの本ですが、読み始めて、最初の部分に、「人が死ぬとき体重が数十グラム減少する」という、100年以上昔の米国の内科医が実施した実験の話が、対談相手の玄侑さんから出てきたのには、いささかびっくりしました。本を読み切ると、玄侑さんは「科学」に関して知見の広い方だということが察せられますが、いわば「魂の目方」の話が出てきたのは、私には意外でした。この対談を企画した同じ新潮社から、「魂の重さの量り方」(2006/1)という、英国のサイエンスライター、レン・フィッシャー(Len Fisher)の本「Weighing the Soul (2004)」の訳本が出ています。フィッシャーは、この本(全255頁)の最初の32頁に「魂の重さの量り方」に関して記述しており、彼の結論は、100年前のDuncan MacDougall, MD,の実施した実験は科学的には厳密さを欠き、従って実験結果は信用できない、というものです(フィッシャーが言うその理由は、人は死ぬと体温が下がり、秤の周りには、この温度変化による空気の対流が生じ、この対流が秤に影響したのだろう、というものです)。それでは、玄侑さんの「魂の目方」の話は間違っているのでしょうか?私の見解では、「正しい」と思います。フィッシャーの主張が「間違っている」のです。何故なら、フィッシャーの主張する対流は、もしその影響があるとしたら、あべこべに、見かけの「体重」を増やす方向に生ずるからです。(フィッシャーの本を翻訳された人は引退された理論物理学者ですが、特にそのような話を解説等で記述はしていません。)もしこのレビューをご覧になって、この実験の科学的意味に興味を持たれる方がおられましたら、2010/4に米国の科学誌に発表された論文、the Journal of Scientific Exploration, 2010 Spring Issue, Vol. 24, No.1, pp. 5-39: Rebuttal to Claimed Refutations of Duncan MacDougall’s Experiment on Human Weight Change at the Moment of Death (this volume is available from amazon.co.jp)の一読をお勧めします。
孤独を生ききる (光文社文庫)
こちらのレビューを拝見して、こころひかれて読みました。
冷たい秋風の吹く月夜に、寂聴さんの住まわれている庵へ招き入れていただいて
さまざまなお話をきかせてくださるかたちで書かれており、孤独や愛について
深刻な内容のお話を語られているのですが、とてもあたたかな丁寧なことばで
聴かせてくださるので、堅苦しい感じがなく読みやすかったです。
ですが、その中身はやはりとても深く、仏教や文学の世界や寂聴さんご自身の
人生の経験のなかから多くを取り出してきて語られてあるので、
読み終えたとき、凄くたくさんのことを学んできたような気がしました。
この本は、1991年に執筆されたものらしく、湾岸戦争のころの記述があったり、
その頃の寂聴さんをテレビのニュースで拝見したことを思い出したりもしました。
西行、フランソワーズ・サガン、トルストイ、東郷青児、宇野千代、レイモンド・カーヴァー、
ボーヴォワール、サルトル、北原白秋、有島武郎、荒畑寒村、里見'ク、トルーマン・カポーティ、良寛…
というかたたちについて語られている部分があります。思い入れのある作家さんのお名前がここに
ありましたら、ぜひ読まれてみてください。寂聴さんからみたこのかたたちのお話のなかに
わたしはとても新鮮な感動がありました。この本に出合えて、よかったです。
瀬戸内寂聴 遺したい言葉 [DVD]
前置きに「ありのままの自分というものを(この)ビデオに収めたかった」とあるけれど、その通りという感じだった。 寂聴さんが、来しこのかたを振り返りながら、人生というものを語る。
寂聴さんは「ありのままの自分というものを出したかった」と言い その意向のために ご自身を全く知らない スタッフの手によって このDVDが作られたという。
「男との別れ」と「出家の動機」について、まじめにインタビューされて まじめに答えているが そこでも「更年期のせいだったのかもよ」と 笑いを忘れない。 この辺りは寂聴さんの 持ち味だ。
生きることば あなたへ (光文社文庫)
ベッドに置き、どうしようもなく寂しくなったり、悲しかったりするとき、必ず読みます。心が穏やかになり、明日が恐くなくなります。誰にも助けをもとめられないような辛いとき是非読んでみてください。必ず最初から順に読む・・・というものではなく、パラパラとめくっていると必ずその時の自分に合うページに出会うはず。人生の一冊・・決して大げさな評価ではないと思っています。