第17作 男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け HDリマスター版 [DVD]
概要上野の飲み屋で、みすぼらしい老人と出会った寅さんは、気の毒に思いとらやに連れて来てしまう。その老人は、日本画の大家・池ノ内青観(宇野重吉)だった。世話になったお礼として青観が描いた絵をめぐり、とらやでは大騒動が巻き起こり、寅さんは旅に出ることに。ところが兵庫県龍野で、寅さんは青観と再会、市長の接待を受け、芸者ぼたん(太地喜和子)と意気投合。しばらくして、ぼたんが、客だった鬼頭(佐野浅夫)に貸した二百万円を踏み倒されそうになって、上京。あまりにも理不尽な事態に、憤慨した寅さんは… 寅さんと日本画檀を代表する画家の友情は、シリーズの楽しさの一つである「寅さんとインテリ」のバリエーション。さらに、気っぷの良い姉御肌の龍野芸者ぼたんは、太地喜和子の好演もあって、寅さんとピッタリの相性。ゲストとマドンナのバランスが絶妙で、佳作となった。青観の正体がわかっても、身分の隔てなく、自分のスタンスでつき合う寅さんの魅力。青観のかつての恋人・志乃役で、岡田嘉子が久しぶりに日本映画に復帰した。昭和51(1976)年7月24日168万5000人1200円109分興業的にはそんなに振るわなかったようだが、非常に高い評価を与えられる作品だと感じる。全作まだ見ていないが、20作品以上観た中では断トツの一位である。以下に理由を付す。 太地喜和子(たいち きわこ、1943年12月2日 - 1992年10月13日)出演当時32歳、の尋常ならざる躍動感、元気そのもの、逆境にあっても気持ちの切り替えが早く、引き摺らない 寅がなんと「俺と一緒にならないかい」的な、はっきりとしたプロポーズをしている。もごもごして、アプローチもできない今までの寅とは大違いである。しかも、最終的にも振られていない。快活なまま終わるのである。 タコ社長が、一番活躍している作品ではないか。太地喜和子が騙された200万円を取り戻そうと、悪人のところに直談判に行く。結果は出せなかったが、この行動力は立派。 最初はルンペンに見える高名な老画家宇野重吉の枯れた演技が良い。寅からの頼み事は正面では断るが、しかし実はしっかり恩を返していたという美談が付いてくる 寺田聡がチョイ役で、常にあくびをしているどうしようもない役で登場して、その後のブレークなど予感させない寅の48作の中で、どういう位置づけになっているかは知らないが、これは寅的な要素が多面的に組み込まれた傑作である。もう一度観たいと思う。 第17作 男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け HDリマスター版 [DVD] 関連情報
栗島すみ子、岡田嘉子、夏川静枝による本書(『女優事始め』)の鼎談が実現したことは、同じ年(昭和60年、1985年)の阪神の21年ぶりの優勝、日本一に匹敵するくらいの<奇跡>ではなかろうか。映画「キネマの天地」でも描かれたように、栗島すみ子は映画女優の存在を世間に認めさせた松竹蒲田の看板女優だった。結婚引退後に成瀬巳喜男に乞われて出演した「流れる」を観るために、ロマンスグレーの紳士たちがわんさかと映画館に押し寄せたという。活動写真の昔話に相槌だけを打つ夏川に向かって、「あなた、そんなウンウン言ってることないじゃないの!しらばっくれて。なにさァ。(笑) あなただって出てたんじゃないの。そン中に…。」とこぼす江戸っ子らしい栗島の歯切れの良さには、思わず頬が緩んでしまう。岡田嘉子は、戦前に旧ソ連国境を越えて亡命した<恋の逃避行>で有名な女優だ。少し垂れ目でふっくらした若き日のスチール写真を見て、どこにそんな大胆な行動を取らせる情熱が潜んでいたのかと驚いてしまう。「(茂原式トーキーの)そのテストをするのが怪しまれないっていうのは、小津組はいつでも夜通しやってるからなんですよ。あそこで明かりがついて何かしてても、みんな怪しまないわけでね。あたしたちみんな一生懸命でしたからね。」と、当時の仕事を岡田は懐かしんでいる。6歳で子役デビューし、14歳で岡田の代役で映画のラブシーンを演じた夏川静枝は、お嬢様のように上品で控え目に見受けられる。本書の鼎談でも、年上の二人(栗島、岡田)に遠慮したのか、謙虚な人柄なのか、長弁舌が少なくもっぱら聞き役、引き立て役に廻っている。関係の深かった溝口健二のことを、「俳優に細かく言わないんですよ。ただ演らせて、俳優がうまく演ればいいけども、まずかったりすると、もうご機嫌ななめになっちゃいましたね。」と証言する。徹夜続きのとき、監督やカメラマンは交代できても俳優は交代できない(岡田)、映画はやっぱり監督のもので、人形たる俳優のものじゃない(栗島)。三者三様に最後は舞台芝居に戻っていったのも、映画の斜陽化やテレビの隆盛だけがその理由ではなかったようだ。本書に索引がないのは残念だが、言及された映画演劇人の脚注が豊富だし、写真も興味深い。とりわけ「年表」は三大女優の波瀾万丈な映画人生を代弁するかのように、64頁にも亘る詳しいものが用意されている点が嬉しい。 女優事始め―栗島すみ子 岡田嘉子 夏川静枝 関連情報
ソ連亡命ごの過酷な取調べ,田舎のラーゲでの男女一緒の地獄の収容時生活,その後のモスクワへの独房監禁の10年を朝鮮人医師と結婚,離婚とか病院で看護助手をしてカーチャと呼ばれ,人気者だったというふうに過去を創り変えてしまった.が,それも見事な彼女の人生創造と考えるしかない.恋に溺れる傾向は少女時代からあった.それが高じて杉本との逃避行.これも稀代の人生と言うしかないでしょうか. 岡田嘉子―悔いなき命を (人間の記録 (108)) 関連情報
僕もシナリオ本を何度読んだか分かりません。監督の大森一樹は当時の若者にはカリスマでした。今見ても最高の映画、日本映画の金字塔です。是非ともDVDを通年販売して欲しい。 オレンジロード急行 [VHS] 関連情報
島津保次郎監督の代表作で、戦前の松竹が得意とした小市民映画。庶民の日常を描くが、これといって大きなドラマはないのに、面白い。ちょっとしたユーモアがあって、観ていて楽しい。戦前の風俗も観られて、資料的にも貴重。 あの頃映画 隣の八重ちゃん [DVD] 関連情報