「どうしてこうなっちゃうかなー」　そういうため息みたいな、感慨にも似たものが思わず出てしまったのが本作だ。　本作で扱われている内容を端的に要約すると、アメリカ福音派教会が政界に強い影響力を持っており、しかも彼らは幼いうちから子供たちを自分たちの教義について異常に熱心に「教育」している、というもの。　まあ、はっきり言ってカルトなのだが、本作に出てくる教師として子供たちを指導している太っちょのおばさん牧師は見物で、世界の悪を滅ぼせだの、腕を振り回しながらまるでヒトラーみたいに演説する。それにつられて、しらじらしい懺悔ごっこだのに興じている子供たちの群れ。見ていると、それらが私には馬鹿馬鹿しくもあり、それでいてどこかゾッとするものがあった。　根源悪というものは存在するが、根源善というものは存在しない、とハンナ・アーレントは言ったらしい。　ヒトは大量虐殺でさえも、善のためとか神のためと自分に言い聞かせることでしでかしてきた。　宗教の問題は本当にムズカシイ。もしかして、善と悪の対決という、キリスト教的な二元論的世界観そのものがすでに問題なのではないか、とさえ思った。自分たちが善で、そうじゃない奴らは悪だ、みたいな思考回路。もっとも、トマス・アクィナスとかに言わせると、キリスト教というのは善一元論なんだというらしい。そういういろんな教義の議論まで含めて、確かに宗教の問題はムズカシイ・・・。　もしも自分がこのドキュメンタリーに出ている子供だったらと、そう考えてしまう。自分が信じている価値観を疑うことは難しい。　キリスト教原理主義とか宗教というと、実際ほとんどの日本人には縁遠い話と思われてる節があるけど、世界の政治や経済に深くかかわっていたりする。何より、生き方とか価値観の問題がある。そういう点で、こういうドキュメンタリーはどんどんいろんな人に見られるべきだろう。ジーザス・キャンプ～アメリカを動かすキリスト教原理主義～：松嶋×町山未公開映画を観るTV [DVD] 関連情報

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