宇宙は本当にひとつなのか (ブルーバックス)
宇宙論関連の本は結構好きで読むのですが、どんなにわかりやすく書いてある本を読んでも、なんだか「わかったような、わからないような……」という気持ちになることが多かったのが正直なところ。
でも、本書は本当に、痛快なほどわかりやすく最新宇宙論について語ってくれます。
ニュートリノ、暗黒物質、超ひも理論、多次元宇宙……なるほど、そういうことだったのかと目からウロコ。
あとがきによると講演をベースにしているそうですが、本当に懇切丁寧に、読者に疑問を残すことなく、説明し尽くしてくれている印象です。
そして、それらがわかればわかるほど、逆に宇宙というものの謎の深さを思い知らされます。
著者は本書で、「この宇宙はうまくできすぎているのです」と書いていますが、実際、このとてつもない構造が成り立っていることの不思議を思わざるを得ません。
巨大なものを扱う宇宙論は、それを突き詰めた結果、超ミクロを扱う量子論と結びつきました。
同様に、宇宙論という科学は、突き詰めていくことで、非科学の極地である宗教(神)の世界に至るのではないか……そんなことをふと、考えたりもしました。
そうして、やはり著者が書いているように、「謙虚な気持ち」にならざるを得ません。
ともあれ、わかりやすくも考えさせる、お勧めの一冊です。
宇宙は何でできているのか (幻冬舎新書)
「宇宙」というタイトルに魅かれますが、中身は最新の宇宙論や素粒子論のお話です。ですから、素粒子物理や素粒子論的宇宙論について多少(かなり?)親しみのある人には、まちがいなく面白い本だと思います。世界トップレベルの研究者から、最先端の科学研究の話を聞けるのは非常に楽しいです。
でもまったくの初心者なら、またはこの本だけでは理解できなかったら、同時期に出版された佐藤勝彦先生の『相対性理論から100年でわかったこと』(PHPサイエンス・ワールド新書)もおすすめだと思います。相対性理論や量子論から、素粒子論・宇宙論まで、扱っている内容はけっこう同じで、しかももう一段やさしく解説されている感じです(中級者にも面白い話もけっこうあります)。
ちなみに、村山斉先生が機構長をされているIPMU(東京大学数物連携宇宙研究機構)は、佐藤先生たちの提案によって設立され、その初代機構長として若い村山先生を招かれたそうです。日本の理論物理学の伝統は、こうして次の世代に引き継がれているんですね。
4%の宇宙 宇宙の96%を支配する“見えない物質”と“見えないエネルギー”の正体に迫る
「宇宙は加速膨張している」という発見の物語である.著者はサイエンスライターで,その発見に関係した研究者のおりなす人間ドラマをドキュメントにまとめあげた.膨張宇宙の発見,宇宙背景放射の観測によるビッグバン宇宙論の確立,そして暗黒物質の存在の確認を経て,物語は暗黒エネルギーの存在の発見へと進む.Ia型超新星が標準光源として使えることが分かり,多くの遠方のIa型超新星を観測することにより,宇宙が物質の重力に逆らって加速膨張していることが確かめられた.この結果,宇宙のエネルギーの70%は物質のエネルギーではなく,斥力をもたらす暗黒エネルギーであることが分かったのである.今のところ,暗黒エネルギーは宇宙定数Λと同定して差し支えないようだ.
物語の登場人物は次から次へと変わっていくので,どの人物がどうだったのかはかなりややこしい.また団体名や施設名やプロジェクト名などは略号で呼ばれることが多いので,覚えにくい.分からなくなれば,ときどき索引を繰ってみるのがいいだろう.和訳と註は,訳者がこの方面の専門家だけあって非常にきちんとしている.