二十億光年の孤独 (集英社文庫 た 18-9)
詩人谷川俊太郎の記念すべき出発点となった昭和の名詩集『二十億光年の孤独』が文庫本でお目見えするのは、なんとこれがはじめてなんだそうです。意外な気がします。
いまから半世紀も昔に、太平洋戦争の敗戦国でまだ貧しかった日本の、二十歳そこそこの若者が出版したとは信じられないくらいに、みずみずしい抒情と快活な才気に富んだ詩が50篇。
当時の詩壇の大御所だった三好達治が序詩を寄せて絶賛したことも納得できる、画期的で清新な詩集です。
処女作には作家のすべてがあるとしばしばいわれますが、この詩人の場合も、現在にいたる旺盛な詩作の拡がりと深まりの萌芽をここに見いだすことができるのではないかしら。
本書には、表題の詩集のほかに、読解の助けになる貴重な文章がいくつか、草稿となった自筆の大学ノートの一部の写真版、それから高校程度の英語力があれば読めそうな全収録作品のやさしい英訳までも附録についていて、文句のつけようがない充実ぶりです。
これはおすすめ。
深海
「Mr.Children Everything -天才・桜井和寿終わりなき音の冒険-」の著者山下邦彦氏に酷評されたアルバム。
氏が指摘するように、ひたすら過去へと退行するメロディー、桜井のズタズタな精神状態が露になった詩は、
明らかにバンドとしての活動の休止、解散を思わせるようなものだった。
自分もこの著書に多大な影響を受けた一人だが、それでも「深海」の持つ特別な輝きを否定することはできないのだ。
なぜ多くの人が「深海」を支持するのか。なぜ「邦楽史上最高のアルバム」と形容するのか。
それは、このアルバムに渦巻く怒り、悲しみ、憎しみ、喜びなどの剥き出しの人間感情、
そして表題曲「深海」が与えてくれる強い「共感」と「解放」に他ならないと思う。
氏は“連れてってくれないか 連れ戻してくれないか 僕を 僕も”の部分を「もはやメロディーになっていない」と切り捨てた。
確かにそうなのかもしれない。しかし、あの悲痛なまでの叫びこそ「深海」の「深海」たる所以のように思える。
音楽は、メロディーやコードだけでは語れないのではないだろうか?
桜井は「NOT FOUND」で“歌や詩になれない この感情と苦悩”と歌ったが、
「深海」こそがそれを表現し得た「奇跡のアルバム」ではないかと思う。
子どもが育つ魔法の言葉 (PHP文庫)
翻訳者が上手いのか、それとも原作がよほど素晴らしいのか、ともすれば説教くさくなる内容を読者に対して自然に語りかけてくる。波が寄せては返すように、「親は子どもの手本」「子どもの全存在を受け入れなさい」と説いてくる。
また本書を読み進めていくうちに、子どもをどのように育てたらよいかという悩みの解決策が、子どもの中に存在しているのではなく、親(=自分)の成長にかかっていることを知ることになる。
もちろん、「子ども」を「妻」「仕事上の部下」と読み替えることは十分可能である。その意味では人間関係全般にわたる解決の鍵が実は自分自身の中に存在することになる。
こうして書いていくとかなり重いテーマを読者に突きつけているのであるが、あくまでも語り口は優しく滑らかで押し付けたようなところがない。
あくまでも表題どおり、子育てのマニュアルとして理解してもよいし、人間関係全般にわたる書として読んでもよい。
性別を問わず、子どもの有無を問わず、年齢を問わず、お読みいただきたい本である。
小百合日和 吉永小百合の映像詩 [DVD]
小百合日和の表紙の写真から長い間、本だと思っていていくら書店にいってもありませんでした。(笑い)ですネ!ある日突然、ネットで検索しているとAmazonで見つけ「DvD」だとわかり、早速購入しました。小百合さんの表情が自然とメロディーに沿って至福の時を感じるすばらしい映像詩でした。これは、小百合さんと私が共有できる癒しのひと時になっています。本当に美しくいつまでもすてきな宝です。