月光ゲーム―Yの悲劇’88 (創元推理文庫)
「双頭の悪魔」「孤島パズル」そしてこの「月光ゲーム」と逆走して読んでしまいました。
推理小説を読みなれない私にとって、トリックがどう、とか、推理がどう、とかはよくわかりませんが、双頭、孤島の時とは江神二郎、アリス共に微妙に雰囲気が違う感じがしました、しかし、その微妙な違いが、私には彼らの違った一面を垣間見たような気がして嬉しくなりました。後二作から読み始めた為、アリスと姫原理代の関係がどうなることかと(マリアに会うのに!)ドキドキしながら読み進めましたが、見事なまでの玉砕っぷりで、哀れアリス!!と思った反面、それでよかったのだよ(マリアと出会えるのだから)!!とも思った私でありました。
火山の噴火による孤立、殺人の動機、はやや強引な感じがしましたが、すべてをひっくるめても私は読んで良かったと思いました。結局は英都大学推理小説研究会の面々、江神二郎、望月周平、織田光次郎、有栖川有栖が大好きなわけですよ!あぁこれで3作読んでしまったなぁ、もっと彼らと一緒にいたいなぁ!!とおもっていた矢先に「双頭」に次ぐ第4作目が最近発売された事を知り車をぶっとばして買いに行ってきました!
もうひと時、彼らと時間を共有できる事をとっても嬉しく思っています。
綾辻行人・有栖川有栖からの挑戦状(2) 安楽椅子探偵、再び [DVD]
レンタルもされていないようだし、放送されている事すら最近まで知らなかったので、綾辻ファンという事もあり、仕方なく(オイ)買ってみたけど、う〜ん…。
人間ドラマやストーリーを見るものじゃないのは分かってるけど、真相を知ってしまったらそれっきり。もちろん初めて見る分には面白いが、何度も見るタイプの作品ではないという点ではコストパフォーマンスは悪い。
謎解きも本格作家らしく実にフェアではあるが、突っ込み所も無い訳ではないし、はっきり言って「そんなとこに気付くか!」という部分もある(何故、疑われると思ったアレをわざわざアレする必要があるんだろう?燃やすなりして処分すれば良いのにとか、携帯電話のアレにしても必ずしも説明の通りとは限らないだろう)。結局、いくら注意深く見ていても疑い出すとキリが無く、真相に辿り着くのは難しいと思われる。
でもまあ、本格系ミステリーが好きで、謎解きに挑戦してみたいという人にならお奨め。
火村英生に捧げる犯罪 (文春文庫)
作家アリス&火村准教授ものの短編を8作集めたもの。収録作品は、数ページ程度の超短編から、中編に近い長さのものまでバラエティに富んでいる。
収録作のなかで、いわゆる短編ミステリとしては「雷雨の庭で」や「長い影」が良くできているなと思う。この長さではの人物描写や、伏線の置き方、結末へ向かう論理展開など、さすがだ。一方で表題作は、冒頭から一気に作品世界に引きずり込む筆力がすごいのと、伏線的な描写がきわめて適切に配置されているところに舌を巻くものの、どうも結論が竜頭蛇尾風にみえてしまい、(実際にはそんなことないのだが)そういう印象を与えてしまうところは損している感じだ。
超短編ものでは「殺意と善意の顛末」がひねりが利いていて楽しい。楽しいといっては登場人物に失礼な話だが、実際にこんなこともありそうだ。警察当局の動きとしてどうかなというところはあるが、フィクションということで。まぁ、作家アリスものが好きならば、読んでみて損はしないでしょう。
女王国の城 上 (創元推理文庫)
前作「双頭の悪魔」から15年ぶりの江神二郎シリーズ。
私は前作を読んだのは5年くらい前ですが、其れでもなお魅力的な登場人物に魅せられ、文庫化を非常に待ち焦がれていた。
待ち焦がれているうちに、江神さんより私の方が先に大学を卒業してしまった(滅)。
先ず、最初に注目するのはこの本の分厚さである。物凄い力の入れようであり、文庫化して上下巻に分かれても凄い分厚さを誇る。。
そしてその長大な全編の中に、一つのパズルの如く「真実」へのピースが方々にちりばめられており、その一つ一つを拾いながら、推論を重ねて行く事によって唯一人の真犯人へと辿り着く事が出来る構成になっている。その為、パズラー系ミステリ小説の一つの極致ともいえる作品とも言えるだろう。
本書は、犯人に辿り着くまでの推論過程に目立った理論の飛躍は無く、間違いなくフェアネスに則った作品であるが、その話の長大さに比例して導き出される「真実」への壁は厚くその道のりは辛く険しい。「読者への挑戦状」を受け真摯に推理しようと思ったら、おそらく普通の読者は出口も見えずにこの知の迷宮に永遠に閉じ込めらるだろう。
その為、推理部分に関しては、良くも悪くも、エラリー・クイーンを愛する著者が、著者と同じ志を持つ自身の往年のファン向け(即ち偏執的な……否、変態的なパズラー向け)に創られた作品だと感じた。
その為、この部分に関して本書は決して万人向けの小説では無く、好みは分かれるかも知れない。
シリーズを通した物語面では、著者は後書きとして、残りは短編となる過去編を挟み、(何時なるか分からないし、確約できないが)最終作となる長編をあと一作描き上げるそうです。
また今回、本編で江神部長が何故大学に残り続けるかが明らかになり、その結果凄まじい「死亡フラグ」を立ててしまったので、早々に最終巻が気になってしまった(汗)。